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Pocochaが支えてくれた、私と音楽とがんの話
ハナミズキをしっとりと。ルパン三世のテーマを軽快に。ときにはスタンダードなジャズも――。
Pocochaのライブ配信で、毎日カラフルで艶やかなサックスプレイを聴かせてくれる永井香織さん。プロミュージシャンである彼女は「サックスのすばらしさをもっと多くの人に知ってほしい」と、2018年からPocochaでライバーをはじめました。
人気の秘密は素晴らしいサックスプレイ。と同時に、一見クールビューティに見せかけて「香織様だぞ!」のお約束の一言と共にフランクにトークを繰り広げる、親しみやすいキャラクターにもあるようです。
だから数々のイベントでも常連としてランクイン。2019年末のリアルイベント「POCO LAND~クリスマス~」では1位を獲得し、名実共にトップライバーとなりました。印象的だったのはこの表彰で彼女が大粒の涙を流していたこと。また、ファミリーの方々も感情を爆発させていたことでした。
実は永井さんは、昨秋、乳がんを手術。ファミリーの方々に「いつ配信に帰ってこれるかわからない」と伝えていたのです。
「けれど元気に復帰し、みんなのおかげで1位に。こんな素敵なことってないし、ライブ配信の力をあらためて感じる機会になりましたね」
そんな永井さんにPocochaと音楽、かけがえのないその魅力について、たっぷり伺いました。

自分のライブ配信を通して、サックス、音楽を好きになってほしい
サックスはいつからはじめたんですか?
中学からです。3歳でピアノ、小学生でトランペットをしていましたが、中学の吹奏楽部の部室にサックスがあって「かっこいい!」と一目惚れ。
そして音大を経て、プロミュージシャンに。
実は音大生の頃から、イベントやTV番組のバックバンドでプロとしてお仕事をしていました。ただ、演奏だけで食べるのは大変。卒業後すぐは、バイトやピアノ教室の先生などをかけもちしながら活動していたんです。
Pocochaを新たな活動の場、演奏の場にしようとライブ配信をスタートしたのでしょうか?
もちろんそれも理由のひとつです。けれど一番大きかったのは「サックスの魅力をもっと多くの人に伝えたい!」と考えたからなんですよ。
正直、20代前半の頃は「私の演奏を聴いて!」と自我が強いタイプでした。しかし7年前からサックス教室の主宰をして変わりました。何も吹けなかった生徒さんが皆、徐々にすばらしい演奏をし始める。サックスをもっと好きになる――。
そうした瞬間を何度も見て、最高だなと感じました。そして、自然と「サックスをみんなに愛してほしい。普及したい」と思うように。サックスを知らない人に魅力を伝えるために、様々な人が集うライブ配信はぴったりでした。そして2018年12月からPocochaを始めたんです。

リアルのライブに来てくれた人はリスナーネームではじめて「分かる!」
最初にライブ配信したときの感想は?
「ストリートライブっぽい!」でしたね。私のことをまったく知らない方が偶然覗いて「いいね」とアイテムを使ってくれたり、毎日配信にあそびに来てくれるようになったり。逆に気に入らなくなったら、気軽に離れられますしね。
確かに、駅前での路上演奏に似ていますね。
そう。一度、実際ストリートでの演奏を考えたこともありました。でも今は規制が厳しくて難しい。それが自宅からできるって、ミュージシャンにはとてもいい環境で、優しいというか、温かいんですよ。
例えば、どういうときに感じるのでしょう?
演奏中にコメントをもらうことが多いんですが、口がふさがっているので返事ができない。そんなとき、別のリスナーの方が「いま演奏中ですいません」とフォローをしてくれるんです。そうやって自然とライバーとリスナー、リスナーの方々がつながれるのも、いいなって。
配信を機会に、サックスが好きになる方も?
多いです。「サックス買いました」という方は何人もいるし、サックスのライブに足を運んでくれる方も増えてうれしい。ライブ会場で突然親しく話しかけられ、一瞬「誰?」と戸惑うんですけどね。リスナーネームを聞いて「ああ、〇〇さん!?」と、気づくという(笑)。

「がん告知」されたことをずっと黙っていた本当の理由。
香織さんはイベントでも活躍されていますね。
ありがたいことですし、すべてリスナーさんのおかげです。とくに12月の「POCO LAND~クリスマス~」で1位になれたのは、感動しました。
はじめての1位だったんですよね?
ええ。その喜びもありましたが、直前に乳がん罹患がわかり手術をしたんです。復帰して最初のイベントで1位をとれたことが何よりうれしかった。
本当に良かったですね⋯⋯。ご自身ががんに罹患されたことは、当初、配信で言わなかったそうですね。
はい。夏に検診でがんが分かったんです。でも「ライバーは人に元気を与えるものだ」と思っていたので心配させたくなかった。だから裏では悩みつつ、配信では笑顔で頑張っていた時期もありましたね。
それは⋯⋯とてもつらかったのでは。
確かに無理をして笑うときもありました。けれど、配信の時だけはがんを忘れられたんです。演奏を楽しみ、リスナーの方々と交流する。その間は、幸せに満たされていました。Pocochaが、そしてリスナーの方々が、思っていた以上に、私の心の支えになっていることを実感しました。だから、配信を切った途端、「すーん⋯⋯」と、暗くなることもあったのですが(笑)。

入院で配信を休んでいる間、改めて「深いつながり」に気づいた
リスナーの方々にがんのことを伝えたのはいつのことなんですか?
入院する2週間前です。直接、配信で伝えました。最初は「え⋯⋯」とみなさん固まりましたが、すぐに「待っている」とコメントしてくださいました。それが本当にうれしかった。
病院からは「最悪、後遺症が残ることもある」「サックスが持てなくなるかも」と言われていました。だから「配信再開が1ヶ月後になるか、半年後かもわからない」と伝えたんです。それでも「待っている」と言ってくれました。
なので退院後、1週間で「みなさんに顔だけでも見せたい!」とすぐ配信をはじめました。カッコつけずリハビリの姿から見せていきたいと思ったんです。
待っているリスナーの方々のためにすぐに復帰されたんですね。
ええ。あともうひとつ理由があって。私が乳がんを伝えたあと「実は僕も」とか「末期がんなんです」というDMをSNSでたくさんいただいたんです。 普段、「香織様~!」と明るく応援してくれる方が「実は病室から観ていた」「演奏に元気をもらっていた」と。私もリスナーに支えられているけれど、リスナーの方を支えることもできていたんだと気づきました。 だから絶対「香織様は何があってもどんなことがあっても、すぐ戻ってくるんだぞ!」と見せたかったんです。病気が、がんが、Pocochaの魅力をあらためて気づかせてくれた。今はそう思います。

ミュージシャンが、ライバーができることって、まだまだある。
1年強の間Pocochaをやってきて、変わったことはありますか?
まずサックスがうまくなりました。あきらかに演奏時間が増えたので。音大でよく「100回の練習より1回の本番」と言われたのですが、配信はリスナーの皆さんがお客さんの「本番」。毎日配信してるのは大きいです。あと前は飲み歩いていた時間が配信に変わったので、それも上達の原因かな(笑)。
なるほど。Pocochaはミュージシャンにフィットするプラットフォームなんですね。
ライブ配信はミュージシャンの新しい大きなステージになると思います。なので、今は他のミュージシャンの方のライブ配信の相談にのることもあります。
そして、私は乳がんを早期発見できたことが、とてもラッキーでした。だから配信でも「必ず検診に行って!」と伝えてます。実際、大勢のリスナーの方が検診に行ってくれました。ライバーにできること、社会的な役割って、もっとたくさんありそうだな、と感じていますね。
これからの活躍が楽しみです。
ありがとうございます。私自身、楽しみです!